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2010年9月21日 (火)

【インタビュー】ラウォノが巨大になるところなど、怖がってくれると嬉しい:絵本「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」 福音館書店 編集:石田明子さん

09年6月に福音館書店から発売されたワヤンを題材に採った絵本「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」の編集を担当された福音館書店の石田明子さんに制作のご苦労などについて伺いました。

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51gphjryujl__sl500_aa300_ (1)児童向けの本を出されている福音館書店から、さらにどちらかというと大人向けあるいは日本では知名度の低い題材であるインドネシアのワヤンを題材にした本書が09年1月に「たくさんのふしぎ ノントンワヤン!」、09年6月に「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」と連続して出版されたのは嬉しくもありまた大変驚いたのですが、これはどういう経緯でワヤンを題材とした本が、しかも連続して出版されたのでしょうか。

それぞれの編集者が進めていたことが、ちょうど時期を同じころにそろったという、不思議な偶然というのが、真相ですが、世の中に偶然はないという示唆もあることですから、人間の及ばない必然だったのかもしれません。

始めからそのように意図したことではありませんでしたが、どちらも企画として決まってから数年の年月がかかり、さらに遡れば、作者にとっては何十年にも及ぶ思索と念願が熟成して時を同じくしてその実りの時期を迎えたのだという実感を持ちました。

(2)今回のワヤンの絵本について編集の方も大変熱意を持って当たられていた伺いましたが、石田さんのワヤンとの出逢い、そしてワヤンのどのあたりに魅力を感じれているか、よろしければお教えいただけないでしょうか。

わたしのワヤンとの出会いは、十数年前、インドネシアのバリ島を訪ねた折、現地の青年に案内されて、海辺の村で夜催されるワヤンを観たときのことでした。

夜の砂浜に作られた小さな舞台では、火が点され、潮風とやし油のにおう薄闇のなかで浮かび上がる影絵はなんとも幻想的で、物語の内容はわからなくても、不思議な世界へいざなわれるようで、忘れられない体験になりました。

ワヤンの魅力はいくつもあります。野外に近い環境で、火を点して夜を徹して演じられるその雰囲気、たった一人のダランという人形遣いによって語られる技量の見事さ、水牛の皮で作られた端正な人形の美しさ、そして語られる物語の血湧き肉踊るスケールの大きさがあげられるでしょうか。

(3)早川さんによると、木口木版は編集の方の当初からの指定とのことですが、ワヤンに向いているなどの確信があったのでしょうか。その意図をお聞かせいただけないでしょうか。

ワヤンの人形そのものが既に完成された美しさを持っていますので、それをそのまま、あるいは真似て絵にしても二番煎じになるだけで、絵本にする意味はないと思っていました。ですから、これは大変な難題を引き受けることになるとおじけづいてもおりました。

実際のワヤンとは別の表現で、あのワヤンの熱っぽくもスケールの大きな世界を表すにはどうしたらいいのだろうと、まったくの手探りでの試行錯誤の連続でした。そのなかで、早川純子さんに引き受けていただけることになり、もともと早川さんの木口木版の作品に惚れ込んでいましたから、私の中でははじめからその願いは強く持っておりました。

そして、ワヤンの持つ様式美の世界は、イラストやタブローの絵より、版画の方がより表現しやすいとも思っておりました。でも、はじめから版画で、と決めるのではなく、早川さんには、筆の表現や、スクラッチの手法やさまざまに試作をしていただきました。

その過程を通して、やはり木口木版で行こうと、自ずと決まっていきました。

(4)「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」を編集されるにあたり、ここだけは押さえたいなど、留意された点はありますでしょうか。

文章の面では、もともとこの物語は、とても長い、入り組んだ内容の神話ですから、その魅力を損なわず、ワヤンに馴染みのない日本の小学生以上の子どもたちに解ってもらえるようにということは、まず第一に留意したことです。

具体的には、長い物語のどの部分を生かし、どの部分は削るのか、どの程度の説明を加えるのか、また、もともと語りの世界ですから、その語りの味わいも残したいと思いました。

絵の面では、それぞれの登場人物が明確にわかること、文では見えない世界をどう広げて物語の世界へいざなっていけるのかということが大事だと思っておりました。

そして、これは絵本として成立させなければならないので、単なる挿絵ではない、ダイナミックに物語を展開してゆく力量が絵に必要でした。それは、早川さんの努力と才能のたまもの、そして、一冊の絵本にたちあげていく過程では、デザイナーのセンスにとても助けられ完成させることができたのだと思っております。

(5)「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」はどのような反響が寄せられているでしょうか。また、福音館書店から直接の続刊または別の形でのワヤンの本など予定はあるのでしょうか。

ありがたいことに、多くの作家の方、アートに携わる方々からは、絶賛の声をいただいております。

まだ、子どもたちからの直接の反響はあまり届いておりませんが、ある方がご自分の四年生になる息子さんに読んで聞かせたところ、じっと聞いていて、最後のところでは涙をながしていたということをご報告くださいました。子どもたちにどう受け止められているのかは、私としてもとても知りたいところです。

今のところ、さらにワヤンのものを出すという計画はありません。この本がとても評判になり、売れてくれれば、そういう可能性が開けるかもしれませんが・・・。

貴重なお話ありがとうございました。(2010/03)

石田明子(いしだみつこ) 
福音館書店にて、20代のころ童話セクションにてローラ・インガルス・ワイルダーの『インガルス一家の物語』5巻(「大草原の小さな家」シリーズ)を手がけ、その後月刊誌「母の友」編集部に移り、2000年から2年間、遠野のわらべうたの伝承者、阿部ヤヱさんの聞き書きを連載し、二冊の本にまとめる(『わらべうたで子育て』入門編・応用編)。

2004年末より絵本セクションに移り、狂言を元にした絵本(『鬼の首引き』、『木の実のけんか』)、アイヌの神謡や昔話の絵本『シマフクロウとサケ』『セミ神さまのお告げ』、奈良・唐招提寺の金堂の屋根を支える隅鬼を主人公にした物語絵本『すみ鬼にげた』などを編集する。

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09年1月刊行「たくさんのふしぎ ノントンワヤン!」

【インタビュー】メイキング・オブ・ワヤンの絵本 写真家熊谷正さんに聞く http://gamelan.cocolog-nifty.com/wayang/2008/12/20091-a894.html

福音館書店 「たくさんのふしぎ」 2009年1月号「ノントン・ワヤン(ワヤンを見に行こう)!」http://www.fukuinkan.co.jp/magadetails.php?goods_id=20626

09年6月刊行「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」

【インタビュー】ラウォノが巨大になるところなど、怖がってくれると嬉しい 版画:早川純子さん 1/2
http://gamelan.cocolog-nifty.com/wayang/2009/08/post-9356.html

【インタビュー】ラウォノが巨大になるところなど、怖がってくれると嬉しい 版画:早川純子さん 2/2
http://gamelan.cocolog-nifty.com/wayang/2009/08/post-3500.html

福音館書店「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」
http://www.fukuinkan.co.jp/detail_page/978-4-8340-2452-4.html

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