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2009年8月13日 (木)

【インタビュー】ラウォノが巨大になるところなど、怖がってくれると嬉しい:絵本「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」(福音館書店) 版画:早川純子さん 2/2

09年6月に福音館書店から発売されたワヤンを題材を採った絵本「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」の版画を担当された版画家の早川純子さんに制作のご苦労などについて伺いました。

★☆★☆★

0006_6   ・版画の技法について
今回の版画は、どのような画材または技法を使用されたのでしょうか。

早川 インクは、版画用の油性インクを使っています。
また人物の着彩にはアクリル絵の具を使っています。
細かい表現の人物は木口木版、木などのざっくりした表現には板目木版を使っています。
背景など絵の具で描いているような所は、モノタイプ(私は銅版の板に絵の具で描いた物を紙に刷っています。)。片観音部分(開けるページ)のハルジュノソスロ、ラウォノの顔のアップは木版リトグラフです。
最終的に、今まで使ってきた版画表現をこの絵本に全部つぎ込んだ感じになりました。

(編注 早川さんのホームページで、木口木版、板目木版それぞれの早川さんの制作手順が紹介されています。
木口木版 http://www.umiusi.net/antler/sikatuno/sikatu2.html
板目木版 http://www.umiusi.net/antler/sikatuno/mokuhann.html  )

 

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背景

・制作の進め方について
実際の絵本の制作は、どのような流れで進めていかれたのでしょうか。

早川 まず乾さんの文章を元に絵本のラフを作りました。
編集者と何度も打ち合わせをしながら、絵本の大きさも含めて大まかな絵本の形を作っていきます。
ラフがおおまかに完成したあと、まず木口木版で人物を彫りました。
今回、木口木版で彫った人物の原画はとても小さいのです。
彫り上がった人物をまず絵本の大きさに合わせて拡大して、デザイナーさんが紙面構成をしていきます。
その後、背景や足りない部分をデザイナーさんとやり取りしながら作っています。(もちろん編集者も一緒です。)
原画を出す、本の形で見てみる、原画を出す、本の形で見てみる、を繰り返して練り上げていきました。
人物や背景の配置を一番良い形に引き出してくれたデザイナーさんの力がなければ、この絵本はできなかったと思います。

・内容のつめについて
前の質問に関連しますが、再話の方、編集者の方、デザイナーの方とは、内容の相談などはどのように進められたのでしょうか。絵コンテなどではなく、版画を彫った後にチェックや確認などされていたのでしょうか。

早川 絵本の絵の部分に関しては、編集の石田さん、デザイナーさん(白石さんと坂本さん)、印刷会社さんとも最後まで直接話しながら進めています。
再話の乾さんとは編集の石田さんを通して話を聞いていました。

・監修について
監修の松本先生からは特にどのような点の監修を受けられたのでしょうか。

早川 早川に対して絵については松本亮さんからは、いっさいありませんでした。
松本さんの「私の著書ではなく、乾さんの文章に向き合わなければいけないですよ。」という言葉が印象に残っています。
2006年の公演旅行にご一緒させてくださったり、ワヤンの資料を惜しげもなく見せていただいたり、ソロやジョグジャなどのいろんなスコスロノの人形を見せていただきました。
2006年の日本ワヤン協会のラママ(ライブハウス)での公演の演目もスマントリとスコスロノに関係する物など…今考えると吟味したものを道筋にあわせて見せていただいていたと思います。
ワヤンや人形についての質問などに答えてくださったりと、じっくり見守っていてくださっていました。

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ワヤン人形(スコスロノほか)

・編集の方について
再話の方、編集の方、デザイナーの熱意がなければ、今回の絵本の形にはならなかったでしょうとのことですが、それぞれの方について詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

早川 まずこの本が制作されたのは、再話の乾さんの“スマントリとスコスロノ”のお話を絵本の形にしたいという熱意があったからです。ずっと長い間、このお話にのめり込んでいたと聞きました。ですので私が版画を完成させるまで長い間お待たせしてしまいました。
編集者の石田さんには、うまく転がしてもらうことで最後まで描いていくことができました。
インドネシアに一緒に旅行に行ったり、ワヤンの公演にもよく一緒に出かけました。私がラフをなかなか描けなかったときも気長に待ってくださったり、作画に入ってからも版画の制作の作業が長引くのをスケジュールをそのつど調整してくださったり、大変骨を折ってくださいました。
デザイナーの白石さん、坂本さん(そして印刷会社の方。)は、文と絵を一番良い形に引き出してくれました。
絵の点数が多く面倒な作業の上、追い込みの3月は週に2回は打ち合わせ、その都度絵本のダミーを何度も出力紙に出し(何冊分出してくださったことか)、練り上げてくださいました。また印刷にも手間がかかり、難航した校正刷り(試し刷り)も粘り強く指示を出してくださっていました。

以上は、早川の知る範囲でのことです。
乾さんは編集の石田さんと文章を責了まで練り上げていました。

・制作の意図について
最初と終わりにあるグヌンガンの描写、人形同士が激しくぶつかり合う描写やクライマックスの巨大なラウォノの描写など、ワヤンの世界を見事に表現されていて大変素晴らしいですが、今回の制作にあたって心がけられた点、表現されたかったことなどありますでしょうか。

早川 ワヤンを見たことがない人が絵本を読んでもワヤンの世界を感じてもらえるよう心がけつつ、それでいて矛盾しますが自分なりの表現も盛り込めればと思って制作しました。

・技術的な苦心点、工夫点について
クライマックスの観音開きなど、技術的な点で特に工夫または苦心された場面(見開き)または箇所はありますでしょうか。

早川 今回は、どこのページも作っていて面白かったのですが、同じようにどこのページも大変でした。

・子供の読者について
絵本ということで、子供を意識された点などはありますか。

早川 今回子供ということは特に意識していません。
ただ、絵本を読む方のほとんどがワヤンを見たことがないと思うので、そこは注意して制作しました。
また、ラウォノが巨大になるところなど、怖がってくれると嬉しいなあと思ってました。

・ワヤンの魅力について
ワヤンの底知れない世界に引き込まれつつあるとのことですが、ワヤンのどのような点に引かれてらっしゃるのでしょうか。

早川 人形の美しさはもちろんですが、ワヤンのお話でしょうか。
ワヤンのテープを聴いていても、ジャワ語はわかりませんがダランの語りに聞き惚れてしまいます。
スマントリとスコスロノの周辺の話しか読んでいませんが、これから他のお話も読もうと思っています。

貴重なお話ありがとうございました。

※画像は、早川さんのブログより転載させていただきました。

【インタビュー】ラウォノが巨大になるところなど、怖がってくれると嬉しい:絵本「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」(福音館書店) 版画:早川純子さん 1/2
http://gamelan.cocolog-nifty.com/wayang/2009/08/post-9356.html

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「早川さんの今後の予定」
2009年8月末 絵本「どんぐりロケット」ほるぷ出版より発売予定
2009年11月 東京/日本橋にて個展を予定

福音館書店「山からきたふたご スマントリとスコスロノ」
http://www.fukuinkan.co.jp/detail_page/978-4-8340-2452-4.html

版画家・早川純子ホームページ
http://www.umiusi.net/antler/

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